名目金利を使って算出されるものが実質金利です。この実質金利は、投資をする上での重要な判断材料となり、また金融政策に関する情報を得ることが出来ます。
名目金利、期待インフレ率、実質金利とは
名目金利とは、一般の方にとっては、銀行の預金金利や、国債など債券の表面上の金利のことです。経済などを解説する際には金融市場関係者の多くは、10年の国債利回りを名目金利として用います。
期待インフレ率とは、市場で予想・期待されている将来の物価上昇率です。経済動向を見る上では、期待インフレ率として「ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)」が多く用いられます。
実質金利とは、名目金利から期待インフレ率(BEI)を引いて算出されたものです。簡単に言えば、物価の影響も考慮した金利ということです。この実質金利がプラスかマイナスかによって、投資についての判断や、今後の政策方針などを予想していくのです。また、為替の動向について解説する際に登場する実質金利には、期待インフレ率(BEI)ではなく消費者物価指数(CPI)が用いられたりと、何についての予想をするかによって、名目金利から引く指数が違います。
実質金利(米国) 株式会社マーケットデータ 2021.3.7
実質金利(米国)米国の実質金利(5年・7年・10年・20年・30年実質金利)のチャートと時系列です。名目金利(長期金利)や潜在成長率、自然利子率(Rスター)、株価との比較チャート、実質金利の移動平均線も掲載。米ドルの強弱やFRBの金融緩和度合いも計れる。計算式や水準など解説付。
実質金利から考える投資環境
実質金利がプラスの時は、名目金利が期待インフレ率を上回る状態です。ということは、モノの値段の上昇よりも金融機関にお金を預けた利息の方が大きく、預金者にとっては有利な状況と言えます。また、預金金利同様に債券の表面上金利も上昇するため、債券へ投資することも有効です。
一方で、モノの値段が上がらずにお金が預貯金や債券に滞留することで、株式などの投資へは資金が向かいにくく、証券市場などは停滞することが予想されます。また、モノが売れず、お金を借りるのにも金利が高い状態ですから、企業の生産活動、設備投資なども停滞傾向になります。
実質金利がマイナスの時は、期待インフレ率(BEI)が名目金利を上回る状態です。金融機関にお金を預けて利息が増えるペースよりも、モノの値段上昇の方が大きく、預金者にとっては不利な状況と言えます。
逆に言えば、低い金利で資金を調達できるため、お金を借りる人(債務者)にとっては有利な状況です。
そのため、実質金利がマイナスの状態においては、預貯金や国債などから株式などの投資に資金が動く傾向にあります。
また、成長企業の多くは、お金を借りてその資金で事業を継続•拡大しています。借りた資金を事業で回収し利益を出すまでに時間がかかりますが、借りている間の利息が少なければコストが抑えられます。そういったことから、ハイテク企業などの成長株などが買われやすくなります。
実質金利から見る投資戦略
現在は日本はもちろん米国など多くの国が実質金利がマイナスの状態です。世界の中でも常に注目され、重要とされているのが米国の実質金利の動向です。
米国にも短期から超長期の国債が存在しますが、一般的には、名目金利として10年の米国債利回りが用いられ、名目金利から期待インフレ率(BEI)が引かれて実質金利が算出されています。
とは言っても、一般の方が米国の実質金利動向を把握することは容易ではありません。そこで、米国には実質金利(実質利回り)としてインフレ連動債(TIPS)という債券があります。
日本には存在しない金融商品ですが、目新しい物ではなく、世界では既に20ヵ国以上で発行されている債券です。米国の米国インフレ連動債(TIPS)10年は、名目金利である10年米国債利回りから期待インフレ率(BEI)を引いて算出されたものと連動するように設計されているので、米国インフレ連動債(TIPS)の10年を見れば米国の実質金利動向を把握する事が出来ます。米国インフレ連動債(TIPS)の動向はインターネットで調べることができます。
次に、米国における実質金利の動向はどうなっているのでしょうか。
先程、米国においても実質金利はマイナスだとお伝えしましたが、この実質金利マイナスは2020年3月頃から始まりました。
経済に打撃を与えた新型コロナウィルスに対する大規模な金融緩和政策とその政策に対しての景気回復期待を背景に、期待インフレ率(BEI)が急上昇したのです。同じ頃、名目金利である10年米国債利回りも緩やかに上昇していましたが、期待インフレ率が名目金利を上回る上昇を続けました。そして、米国では実質金利のマイナスと同時に株高も始まりました。
(米国の実質金利) S&P500との比較チャート 株式会社マーケットデータ 2021.3.7
https://stock-marketdata.com/reai-interest-rate-us.html#toc19
2021年に入ってからも期待インフレ率(BEI)の上昇と10年米国債利回りの緩やかな上昇は続きました。
米、消費者の期待インフレ率3%台に上昇 NY連銀調査 Quick Money World 最終更新 2018/5/15 09:31
https://moneyworld.jp/news/06_00015013_news
しかし、その中でも少しずつ状況が変わってきたのです。1月5日に0.95%だった10年米国債利回りが、3月15日には1.6%と急上昇、期待インフレ率(BEI)は1月5日に2.03%、3月15日には2.27%と緩やかな上昇となりました。そして、5月10日に10年米国債利回りは1.6%、期待インフレ率が2.54%でした。米国債利回りの金利上昇は頭打ちする一方で、期待インフレ率(BEI)は緩やかに上昇が続き、ついに13年ぶりの高水準にまできています。
この状況を、投資家はどう見ているのか。実質金利はマイナスが続いているため、投資環境としては良いようにも見えます。しかし、政府の金融政策や期待インフレ率(BEI)の上昇を考えれば、もう少し米国債利回りが上昇していいのではないかと思われています。
債券の場合は、債券を売れば利回りは上昇する仕組みです。
債券から株などの資産にお金が動けば、債券の利回りは上昇します。実質金利マイナスで、投資環境は良いはずなのに金利が動かないという事は、「債券を売るのを見合わせている=様子見」という状態が浮かんできます。
その背景には、今の経済正常化が一時的なものなのかどうかを見極めたい心理が働いていると言えます。
もし正常化が継続的なものと判断されれば、債券は売られ利回りが上昇、名目金利が上がると共に、すでに期待インフレ率は先行して上昇しているので、バブルが起こることが想定されます。そうなる前にアメリカ政府が政策を打つか否か。
バイデン米大統領は4月の雇用者数の伸びが市場予想を大きく下回ったことについて、米政権が打ち出した経済政策が景気を押し上げるために必要であることを示していると強調。失業保険が手厚くなったことが雇用の妨げになっているとの見方は否定した。
バイデン大統領、雇用統計は経済政策の必要性を示しているアメリカ政府の経済政策 Bloomberg Jenny Leonard、Christopher Condon 2021年5月8日 3:59 JST
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-05-07/QSQW93DWRGG001
パウエル議長としても、新型コロナウイルス禍からの米経済と労働市場の回復を支援するため緩和的な金融環境を望む一方、2001年のハイテクバブルや07年の住宅バブルの崩壊時のようなリセッション(景気後退)の危険性も認識しており、金融市場を巡って板挟みの状態に置かれている。
パウエル議長、コロナ禍からの経済回復支援とバブル警戒で板挟みにFRB の動向 Bloomberg Rich Miller 2021年5月7日 13:42 JST
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-05-07/QSOHRODWLU6B01
実質金利マイナスの環境下の今、この議論が金融市場では繰り広げられています。
今後も、実質金利、名目金利、期待インフレ率(BEI)の動向が注視されます。
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