アルケゴスショックとは(3)

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アルケゴスショックとは(3)
大規模なブロックトレードで判明したアルケゴスショックにより、日欧の金融機関で大きな損失が発生し、市場を震わせました。この一件はファミリーオフィスと、トータル・リターン・スワップという取引手法が金融規制の穴をついた形で行われたことが問題視されており、金融市場では今後の規制強化の声が高まっています。

金融規制の穴

アルケゴスを運用していたビル・ホワン氏ですが、前述したように、2012年に中国株でインサイダー取引を行ったことによりウォール街を追放されています。そのような経緯からビル・ホワン氏は米国金融界では要注意人物として警戒されるべき存在だったわけですが、ファミリーオフィスという形態に移ることで、規制当局の監視下に置かれずにひっそりと運用を行うことができてしまいました。

ファミリーオフィスは個人資産を運用する目的の私的ファンドであり、運用の開示・報告等の義務がありません。ドット=フランク法によりヘッジファンドへの規制が強まる中、規制の緩いファミリーオフィスに移行するヘッジファンドは増加傾向にありました。
アルケゴスでは100億ドルもの資産にレバレッジを行い、500億ドル規模での運用を行っていたといわれています。通常これだけの規模の運用をすれば規制当局への報告が義務となりますが、個人資産管理目的でのファミリーオフィスにおいてはその義務はありません。

そのためアルケゴスで行われていた取引は広く知られることはなく、莫大な金額での投資を実現することができていました。
今回のアルケゴスの問題では金融機関側でアルケゴスの運用状況の全体像を把握できれば、適切なリスク管理ができた可能性がありますが、把握できなかったのはファミリーオフィスゆえアルケゴスに開示義務がなかったことにあり、ファミリーオフィスという規制の穴をついた形となりました。

さらにアルケゴスの取引の実態が把握しづらかった要因としてトータル・リターン・スワップという取引手法を行っていたことがあります。
この取引では、売買による利益・損失はアルケゴスに発生するにもかかわらず、株式の名義は金融機関となります。銘柄の選定、売買のタイミング等はアルケゴスの意思であるため、いわばアルケゴスは金融機関の名義を借りて好き放題取引ができていた状態です。
約500億ドルという巨額の投資を行っていながら、ブロックトレードによって市場を騒がせるまで、アルケゴスの名前が全く挙がらなかったのはトータル・リターン・スワップを「隠れみの」として利用したためです。
トータル・リターン・スワップに関しては著名投資家のウォーレン・バフェット氏が2002年の株主への手紙で「金融の大量破壊兵器」と称し、その危険性は前々から話題に上がっていました。

本来であればしっかり監視されなければならない人物が、ファミリーオフィスとトータル・リターン・スワップを利用することで監視の目を逃れながら、レバレッジにより500億ドルという資金を動かし、これほどの事件になるまで全く明るみにならなかったことは非常に問題視されています。
そのような中、アルケゴス・ショックを受けて今後どのようなことが考えられるでしょうか。

今後のリスク

アルケゴス・ショックが直接の原因として金融危機等につながることは現状考えにくいです。しかしこの一件から今後想定されるリスクを挙げると

  1. 第2のアルケゴスがあらわになる可能性
  2. 規制強化による金融市場の変化

が考えられます。

1.第2のアルケゴス

アルケゴス同様、未だあらわになっていないファミリーオフィスからもこのような破綻が起きる可能性があります。
アルケゴスがファミリーオフィスであるにもかかわらず今回これだけ巨額の取引を行ったことが判明したのは株価の下落による損失が発生し、追加資金を差し出すことができず、巨額のブロック取引が行われることにより露呈しました。しかし今回これだけの損失を出さなければ発覚はもっと遅れていた可能性が高いです。
そのため現在は顕在化していないだけで、過度にリスクテイクしているファミリーオフィスからも、大きな損失が発生する可能性は十分にあります。

アルケゴスのようなリスクの高い運用をしているファンドは存在するのでしょうか。
2020年より世界を騒がせている新型コロナウイルスにより、世界景気の悪化が懸念されています。そのような中で各国政府は歴史的水準の金融緩和・財政出動を行うことで景気を下支えし、株式市場は実体経済に見合わないほど上昇しました。そんな直近の株式市場は一部ではバブルを疑われるほど非常に盛り上がっております。
そのため直近の上昇により、腕に自信を覚えた投資家がアルケゴスのように大きく利益を狙うため過度なポジションをとっている可能性は十分に考えられます。アルケゴスもこれだけ大きく集中投資した裏には、そういった背景が考えられると思います。
もし今後、熱気を帯びている株式市場に水を差すようなことがあった場合、過度にポジションを集中させたファミリーオフィスでの破綻といった話が出てくる可能性も警戒が必要です。

2.規制強化による金融市場の変化

次に考えられるのが規制の強化による市場の変化です。これからデリバティブ取引やレバレッジを行う際の開示義務や、取引への制限などが予想されます。

2008年の世界的な金融危機のさなかに米連邦預金保険公社(FDIC)総裁を務めたシーラ・ベアー氏は「今回の問題が、規制金融機関のプライムブローカレッジ部門(そして規制・監督機関)にとって、高度にレバレッジを利用するヘッジファンドとの関係を見直すきっかけになってほしいものだ」とツイートした。

Bloomberg 2021年4月2日 ウォール街不意突いたアルケゴス-破綻までレバレッジ全容見えず
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-04-02/QQWLENT0AFB901

アルケゴス・ショックにより、レバレッジやデリバティブ取引といったハイリスクな取引には、より慎重になる必要があり、それらに対する規制を強化するといった声は高まっております。
これまで行ってきたこれらリスクの高い取引での運用が難しくなると、運用成果を上げたい投資家はほかの手段で大きなリターンを得る戦略をとることも考えられます。例えばですが、仮想通貨やNFTと言われる投機性の高い市場に資金が集まる可能性も考えられます。
そうすると投機的資金が別の市場に移っただけで、その市場で過度に資金が集まれば別の形での破綻等が出てくる可能性も考えられるため、そうなってしまっては結局規制強化のイタチごっこに過ぎません。
またこれまでレバレッジ等によりポジションを膨らませることができたことが、融資の審査が厳しくなるなどで規制が強くなれば、それだけで株式市場の熱気に水を差すような形になるかもしれないと私は考えております。
これからどのような規制が行われるのか、引き続き注視する必要があります。

ファミリーオフィスと言われる資産管理会社での500億ドル規模の集中投資、2兆円規模のかつてない規模のブロックトレードというのはおそらく歴史に残る金額になると思われます。
新型コロナウイルスによる大規模な経済対策として行われている市場への資金供給がバブル的様相を形成しており、アルケゴス・ショックに限らずゲーム性を帯びた投機的取引が随所で見られます。例えば2021年の年始に米国ゲームストップ社の株式が急騰したことが話題になりましたが、インターネット掲示板で「ロビンフッター」と呼ばれる複数の個人投資家が投機的資金を集中させたことが裏にありました。この件に関しても、世界的な金融緩和による極端な楽観が招いたことと考えられています。

2021年5月現在でアルルケゴス・ショックをきっかけに大きな事件として外部に波及している様子はないです。「あくまで一つのファミリーオフィスが破綻しただけ」という認識で落ち着いていますが、リーマン・ショックに発展したサブプライムローン問題も最初は「局所的」といった認識であったところからの、金融危機につながったこともあるため警戒は十分に必要です。

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