日米対中国の対立における日本企業の今後について

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日米対中国の対立における日本企業の今後についての考察

はじめに

本稿は、日本の大手製造業に長年勤務し、長期の中国駐在経験をお持ちのビジネスマンの方からの寄稿です。

日米対中国の対立における日本企業の今後についての考察

ワシントン現地時間4月15日に行われた日米首脳会談で、日本は米国とともに中国に対峙(たいじ)する姿勢を明確にしました。
これに対し中国外交部は、「あらゆる必要な措置を取る」と表明しています。
また4月19日付け共産党機関紙環球時報は、「日本は台湾問題に近づくな。深く関われば関わるほど代償も大きくなる」と警告しました。

日米と中国の対立が激化するなかで、日系企業の今後について考えてみます。

中国による日系企業締め付けは必至

中国に進出している日系企業は、2020年1月時点で1万3,000社以上にのぼります。
製造業が全体の約4割を占め、卸売業が全体の約3割を占めています。

業種別では、最も多かったのは「製造業」(5559社)で、全体の約4割を占める。次いで多いのが「卸売業」(4505社)で、全体の約3割を占め、2019年(4495社)からは0.2%増加した。他方、「小売業」(443社)などでは前年比減少となった
今後中国があの手この手を使い、これら日系企業を締め付けてくることは間違いありません。

- 「日本企業の中国進出動向(2020年)」 帝国データーバンク 2021.2.27掲載

2016年韓国はTHAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)の配備を決めました。
中国は、韓国製品の不買運動、韓国旅行自粛、韓流コンテンツの検閲強化などで締め付けを図りました。

2020年オーストラリアは、武漢でのコロナ感染拡大への中国の初期対応について、検証作業の必要性を主張しました。
中国はオーストラリアに対し、石炭・ワイン・牛肉・大麦などを対象に、輸入停止や追加関税措置を取りました。

相手国を意のままに動かそうとする中国の巧妙・狡猾(こうかつ)なやり方は、日本も何度も身をもって体験したはずです。

2010年9月尖閣(せんかく)諸島沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に体当たりした事件をきっかけに、中国で反日運動が盛り上がりました。

このとき私は、中国広州市に駐在中でした。
反日デモ隊が会社に押し寄せ、いつ破壊活動が始まってもおかしくない一触即発の状態でした。
自宅に戻っても外出はままならず、身を潜めてじっとしているしかありませんでした。

今後日系企業になにが起こるのか?

私は日本企業の現地責任者として10年間中国に駐在しました。
中国の歴史、文化、料理などは、多様で奥が深く本当に素晴らしいものです。
また中国ビジネスは、スピードと躍動感にあふれ、日本では味わえない興奮を与えてくれます。

一方で、中国ならではの恐ろしさや不条理もイヤというほど体験しました。
これらの体験をもとに、今後日系企業になにが起こるか考えてみます。

反日示威行動、打ち壊し、不買運動

2010年9月尖閣(せんかく)漁船衝突事件があり、2013年12月には安倍首相靖国参拝がありました。
このとき中国で激しい反日デモがおこり、大手日系スーパーの打ち壊し、日本製品不買運動があったことは日本のメディアでも大きく報道されました。

反日活動のなかで最も警戒すべきは、日本人の身体に直接の危害がおよぶことです。
会社にデモ隊が押し寄せた経験は先に書きました。
そのほかにも、日本からの出張者をホテルで出迎え中にうっかり日本語を口にしてしまい、近くの中国人から「お前は日本人か?」と詰め寄られた経験があります。

元来、中国人は日本人に対し控えめなところがありました。
日本の経済成長や技術への敬意からくるものです。
ところがGDPで日本を追い抜いた2010年を境に、日本への接し方が上から目線に一変したと思います。
今後日中の間で中国側に気に入らない事件がおこると、再び反日活動が燃え上がることでしょう。
日本人駐在員やその家族に危害がおよぶリスクは、これまで以上に深刻になっています。

中国が相手国に経済的ダメージを与えようとするとき、不買運動は常套(じょうとう)手段です。
激しい不買運動もいずれは収束しますが、元に戻ることはありません。
尖閣(せんかく)漁船衝突事件のとき、日系だけでなく多くの一般のスーパーやコンビニから一斉に日本製品が姿を消しました。
商店主が不買運動に賛同したのではありません。
店の打ち壊しを避けるため、日本製品を撤去したのです。
日本製品があった陳列棚は、2日後には韓国製品や台湾製品に置き換わっていました。
いったん奪われた陳列スペースは、その後も元に戻ることはありませんでした。
「日本品は優秀」の神話が薄くなった今日、いったん奪われたシェアを回復するのはさらに難しくなっています。

受注締め出し、通関引き延ばし

日系企業の売上に影響があるのは、一般消費財だけではありません。
私の会社は、社会インフラ関連製品の製造・販売をやっていました。
受注はプロジェクトごとに行われる入札で決まります。
それまで勝ったり負けたりでしたが、靖国参拝問題があった直後からパッタリ受注が止まりました。
中国政府から何か指導があったのかどうか分かりません。
しかしお客様が私を見る気の毒そうな表情から、何が起こっているか察しはつきました。

新規の受注がストップするのは経営の打撃ですが、もっと困ったのは日本から材料や部品の輸入がスムーズにいかなくなったことです。
品物は届いても通関が通らず、税関倉庫で何日間も足止めされました。
過去に何度も輸入していたものなのに、輸入品の詳細な説明書提出を求められたり、税率適用コードに疑念があるとクレームを受けたり、埒(らち)が明きませんでした。

輸入に支障がでると、不安になるのはお客様です。
製品の納入が遅れるだけでなく、将来メインテナンスができなくなると致命的だからです。
結局、日系企業に仕事を出すのはやめておこうとなるのです。

事実上の受注締め出しにせよ、通関引き延ばしにせよ、表面上は国際貿易ルールに違反するものではありません。
この辺が中国の巧妙で狡猾(こうかつ)なところです。
2021年3月世界貿易機関(WTO)の事務局長に、ナイジェリアのオコンジョ氏が就任しました。
ナイジェリアは中国から巨額な経済支援を受けています。
WTOを味方につけた中国の締め付け行為は、今後ますます大胆になることを覚悟しなければなりません。

従業員へのタレコミそそのかし

ここからは、懇意にしていた日系企業の総経理(社長)から聞いた話です。

彼の会社は靖国参拝問題の1か月後、地元税務署から突如社内立ち入り調査を受けたというのです。
会社は2000年代半ばに進出し、「二免三半減」という税優遇措置を受けていました。
外資企業の法人税を、最初の二年間は免除、次の三年間は半分にするというものです。
立ち入り調査は、「会社定款にない事業をやっているので、優遇措置を取り消し過去に遡って追加徴税する」という容疑でした。

彼が驚いたのは、税務署が細部に至るまで事実関係を把握し、裏付ける書類の存在まで知っていたことです。
どう考えても、従業員をそそのかし、タレコミをさせたに違いないというのです。
またタイミングから、日系企業嫌がらせの一環としか思えないというのです。

なお定款違反といっても、日本の本社から頼まれて数万円の製品模型を中国で制作し輸出したもので、言いがかりとしかいえないとボヤいていました。

日系企業責任者の拘留

次は、私がよく知る日系企業責任者が直接被害者になった事件です。

彼の会社は、日本から機械製品を輸入し中国のお客様に販売していました。
このとき日本からサービス・エンジニアが一緒にやってきて、据え付け・試運転を支援していました。
事件は、サービス・エンジニアの活動が課税対象(輸入税)になるかという判断をめぐって起こったのです。

ある日税関当局に出頭を命じられた責任者は、その場で拘束され留置されました。
中国は税関が捜査権・逮捕権をもっているのです。

留置場の環境は酷(ひど)いものだったといいます。
窓ガラスは破れ、雨が直接吹き込み、夏場は蚊の大群が襲ってきます。
食事は喉をとおらず、差し入れでなんとかしのいだそうです。
処分が決まるまでの10数か月間、恐怖と絶望の日々であったといいます。

この事件は、反日活動のなかで起こったものではありません。
しかし中国が日系企業を脅してやろうと思えば、このくらいのことはいくらでもできるのです。

2014年11月、中国は反スパイ法を施行しました。
それ以降、大手商社の日本人社員が懲役3年の判決を受けるなど、少なくとも15人が拘束され、うち9人が実刑判決を受けています。(*2)

引用
中国広東省広州市で2018年2月、国家安全当局に拘束され、中国刑法の「国家の安全に危害を与えた罪」で懲役3年の実刑判決を受けた大手商社・伊藤忠商事の40代の日本人男性社員が今月20日に刑期を終え、出所していたことが日中関係筋への取材でわかった。男性は帰国の準備を進めているという。
外務省によると、男性は19年10月、同市中級人民法院(地裁に相当)からスパイ行為などを対象とする同罪で実刑判決を受けた。具体的にどのような行為が有罪と認定されたのかは公表されていない。

中国で15年以降にスパイ行為に関わった疑いなどで拘束された日本人は少なくとも15人に上り、うち9人が実刑判決を受けている。(北京=高田正幸)

- 「 中国で拘束の伊藤忠社員、刑期終え出所 帰国へ準備」 朝日新聞DIGITAL 2021.2.21更新

怖いのは、この法律がいくらでも恣意的な運用が可能なことです。

中国事業は「悪化の懸念」ではなく、「間違いなく悪化」する。

それでは、中国進出の日系企業は今後の中国ビジネスをどう考えているのでしょうか。
2019年8月~9月に約9,000社を対象に行われた調査によれば、「企業の半数は、米中貿易摩擦の中でも中国ビジネスの現状維持を望んでおり、中国事業の縮小・移転・撤退を検討している企業の比率は過去5年間で最低水準を記録した」結果になっています。

引用
アンケートでは、中国での今後1~2年の事業展開について「現状維持」と回答した日系企業が最も多く、2018年の前回調査の44.8%から今回は50.6%に増加した。「縮小もしくは移転・撤退」との回答は、前回の6.6%から今回は6.3%とわずかながら減少した。(財新記者:陸文) ※原文の配信は9月17日
- 日系企業の中国事業、半数が「現状維持」を希望 | 「財新」中国Biz&Tech | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準  2020.10.2更新

多くの日系企業が、都合の悪い現実に目をつぶり、はかない幻想にすがろうとしているようです。
今後日系企業の中国事業は、「悪化の懸念」ではなく「間違いなく悪化」します。
中国に進出している日本企業は、今後覚悟を決めて経営にあたらねばなりません。

おわりに

日米と中国の対立が激化するなか、今後日系企業になにが起こるか考察しました。

幻想を抱いてはいけません。
経営悪化は不可避と覚悟して、迅速に手を打つことが求められています。
いざという事態に直面してからあわてても遅いのです。
事前準備を怠らないでください。

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